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キャブレターの種類と構造

●バタフライキャブレター(固定ベンチュリー型)

キャブレターの中で最も古い歴史を持つのがバタフライキャブレターです。
流体は直線に流れるよりも軽く山なりに流れる方がスピードが上がる事を利用して、メーンボアの一部にベンチュリー(絞り)を設けています。
また、混合気の量を調節する為にスロットル(アクセル)に連動したバタフライバルブ(蝶弁)を取りつけています。
構造が簡単で調整が容易ですが、ベンチュリーが固定されているので低速運転と高速運転を両立させる事が難しく、またスロットル操作に対する反応がやや鷹揚という欠点があります。
このタイプのキャブレターは、ハーレー用で有名なS&S、四輪のレーシングキャブレターとして名高いウェーバーツインチョーク(ツインチョーク:双胴型キャブレター)などがあります。

butterfly carb
 
●ピストンバルブ型キャブレター

固定ベンチュリー型キャブレターの持つ弱点を一掃したのが、別名VM型とも呼ばれるこのピストンバルブ型キャブレターです。
可変ベンチュリー型と言ってよいこのキャブレターは、上下にスライドするピストンバルブでメーンボアを流れる空気の流量を、またピストンバルブ先端に取り付けられたジェットニードルとメーンジェットで空気量に見合ったガソリンを計量します。

 

ダイレクトなスロットルフィールが何よりの美点で、常に乗り手に忠実ですが、丁寧に操作しないとエンジンに必要以上の空気を送ってしまって息付き(失速)を起こしやすく、上級者向けと言えるでしょう。
ピストンバルブ型で有名なものにはケーヒンCR、FCR、ミクニTM、TMR等の二輪用レーシングキャブレターが知られています。

vm carb
 
●負圧可変ベンチュリー型キャブレター

ピストンバルブ型キャブレターがその性能を発揮する為には乗り手の技術が必要ですが、これをある程度扱いやすく改良したものが、負圧可変ベンチュリー型キャブレター、いわゆる負圧式キャブレターです。

 

ピストンバルブが空気の流量を、ジェットニードルとメーンジェットがガソリンの計量を受け持つ事はピストンバルブ型と同じですが、ピストンバルブをスロットル(アクセル)ワイヤで直接動作させずにメーンボア内に空気が流れる時に発生する負圧を利用してピストンバルブを作動させるのが特徴です。

 

スロットル(アクセル)は、ピストンバルブの先(エンジン側)に取りつけられたバタフライバルブを開閉します。
ピストンバルブを持ち上げる力はエンジン自体が発生させますので、エンジンに必要以上の空気が送り込まれる事はなく、加速不良などが起こりにくくなっています。

 

ただし負圧が高まるまでピストンバルブが持ち上がらない為に、アクセルを開けた時の反応はやや緩慢で、全開にしてもバタフライバルブがメーンボア内に残る事から同じボア径のピストンバルブ型キャブレターより出力面で不利な事、また、キャブレターの全長が長くなる事も欠点と言えるでしょう。(※)
負圧式キャブレターでは四輪でも用いられるSU、また二輪ではCVなどが有名です。

cv carb

エンジン回転が上昇するとサクションホールから空気が吸い出され、サクションチャンバー内が負圧になります。
すると薄いゴム膜(ダイヤフラム)で緩やかに取り付けられたピストンバルブは負圧でサクションチャンバーに吸い込まれるようにして持ちあがります。
エンジン回転が落ちると、ピストンバルブはスプリングの力で元に戻ります。

(※)キャブレターの全長について
キャブレターの全長が長くなる事が何故欠点になるのでしょう?

 

キャブレターの全長が長くなると当然空気の通路が長くなります。
エンジンに到達するまでに時間が掛かってしまうわけです。長いストローでジュースを飲むのと短いストローでジュースを飲むのとでは、短い方がより速く楽にジュースが飲めるのと同じ理屈です。
また同じ理由からピストンバルブそのものも前後に短い方が全開時に抵抗が少ないとされています。

 

現在のレーシングキャブレターが薄い板状のフラットバルブを持つのはこの為です。

 

ところがピストンバルブの厚みはメーンノズルの負圧特性、全開流入量と密接な関係を持っており、その厚みが薄ければ薄いほどよい、と言う単純なものではありません。
例えばノズル上部でシャッターの役目をする板が薄い場合(ギロチン状態)、ノズル負圧を発生させるにはノズルよりも上流側でせき止めなければならず、同時にJNを保持する役目もあるので保持部の分だけオフセットする必要性も生じる訳です。

 

各メーカーはA/F特性をコントロールしやすい断面形状を模索し、工夫を凝らしています。
(そのよい例がケーヒンPWKの半月型異形断面バルブやPJのオーバル断面バルブでしょう)

 
●ダウンドラフトキャブレターとは?

4サイクルエンジンの進化の歴史はバルブ形式の進化の歴史でもありました。
それはつまりピストンの発生する吸入負圧をいかに効率よく利用するか、と言う事でもあるのです。

 

当然ピストンの真上に吸気ポートとキャブレターがあることが望ましいのです。(そうする事でピストンが下がる時に発生する力を100%吸気に使う事ができますものね)
4サイクルエンジンはできるだけピストンの真上に吸気ポートを持ってこようとポートとバルブを可能な限り立てて配置しました。(専門用語で「バルブアングルを立てる」と言いますね)

 

それに伴ってキャブレターもエンジンの上へと移動していったのですが、従来のキャブレターではフロートチャンバー(ガソリンを貯めておくところ)が水平に作られているので、ポートが上を向いているエンジンにそのまま付けるとガソリンがこぼれてしまう上に、大気圧がちゃんと掛からない為にメーンボアの中へしっかり吸い上げられなくなってしまいます。(キャブレターが前転してるんですから仕方ありません)

そこで作られたのが「ダウンドラフト(吹き下し)キャブレター」です。
これはキャブレターが前転した状態で(メーンボアが直立した状態で)使えるようにしたもので、今までのキャブレター区分とはちょっと違います。

 

このキャブレターは固定ベンチュリー型やピストンバルブ型、負圧可変ベンチュリー型と言ったすべてのキャブレターに存在します。
例を挙げるならば固定ベンチュリー型ダウンドラフトのエーデルブロック(フォードV8エンジン等によく使われています)、ピストンバルブ型ダウンドラフトのミクニTDMR、負圧可変ベンチュリー型ダウンドラフトのケーヒンVPなどがあります。

 
 
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