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「真冬の真珠」
吐く息すらも凍りそうなその日、停留所で一人バスを待つ私の前に彼は現れた。
こんなにも寒い日に、単車に乗って。
「乗ってくかい?」
ヘルメットを差し出しながらそう言った彼の鼻は真っ赤だった。
弟もそうだけれど、単車乗りというのは不思議な人達。
寒い日にわざわざ寒い目に遭わなくてもいいのに。
それでも屈託のない彼の笑顔を見ていると、その魅力の前にはこの寒ささえも瑣末な事なのかもしれないと思える自分がいた。
うなずく私に彼は、革ジャンを脱いで私に着せてくれた。
ふかふかの毛皮で裏打ちされたジャンバーは、びっくりするほど温かかった。
「でも……」
このジャンバーがなければ彼は、身を切るこの寒さの中で凍えるような思いをしなくてはならない。
彼は何も言わずにウインクすると愛車のエンジンを掛ける。
私はリアシートに腰を下ろすと、ぎゅっと彼につかまった。
使用画材:
holbein Acryla
KMKケント