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Parts Impression

SOHCエンジニアリング製 660cc鍛造100mmピストン

660cc化への経緯

管理人の愛機は購入時点でヨシムラφ101.5mmピストンで680cc化されていた。
ノーマルの1JKを購入し一年間608ccに馴れ親しんだ私にとって680ccの生み出す暴力的なトルクは麻薬のように甘美なもので、以来12年間、4代に亘ってヨシムラピストンで走り続けた。
限界以上にボアアウトしたシリンダーも、鋳造のピストンも、全てが限界を突破した存在だったからその寿命は儚いものだった。
35000km以上走って天寿を全うしたピストンもあるかと思えば、中には5000kmで焼け付いたピストンもあった。
そのたびに主治医であるショップの親父さんに「また?」なんて苦笑いをされながら修理を依頼したものだ。
リングの交換やヘッドガスケットからの吹き抜け、シリンダー輪切りによる修理やクランク交換、ケース交換などでOHに出た回数は数知れず。
そんな680ピストンであったが、製造から20年余。メーカー在庫はとうに払底、オークションでも消耗品が入手困難となって遂に680エンジンを諦めることになる。
そこで白羽の矢が立ったのは今は亡き御大のアイデンティティーともいえるSOHC製100mmピストン、660ccエンジンでございました。
製造元のSOHCエンジニアリングによれば特殊メッキシリンダーと鍛造ピストンの組み合わせは、レースにも使えるパフォーマンスと15万km以上のギャランティを持つと言う。
果たしてその言葉の真偽のほどは如何に?

SOHCエンジニアリング製ピストンを入手して

実際にピストンをオーダーしてみて並べてみた。
SOHC660ピストンとヨシムラ680ピストンとの比較

左のピストンがSOHCエンジニアリング製鍛造φ100mmピストン。お隣は今まで使っていたヨシムラ製680ccピストン。
写真では判らないが、SOHC製ピストンはφ100mmの660cc、ヨシムラ製はφ101.5mmの680ccである。
ストロークは一緒だから、その直径差1.5mmで20ccも差が出る。
それもあってか、SOHC製は実に小さく見える。

 

ノギスによる実測でスカートが4mmほど短いが、ハイトは逆に圧縮比が10.5のヨシムラピストンより11.5でオーダーしたSOHCピストンのほうが2mmほど高くなっているからそれほどの差はないはずだが、確実に小さく見える。

 

重量は料理用の計量秤での計測ではあるが
680ccピストンが単体435g、ピン95g、総重量570gに対し
660ccピストンが単体379g、ピン95g、総重量500g。
ムービングバーツゆえこの軽量化は大きい。

 

変わった特徴としてセカンドランド(トップリングとセカンドリングの間)に浅く溝が彫ってある事。
スラップ面圧の調整用だろうか??

 

しかしこうして二つのピストンを並べてみると意外にその設計思想がよく似ているのに気づく。
どちらのピストンも同じヒトが設計しているから必然的に似てくるものだろうが、最近のモダンシングルのように過激なデザインではないのはSRXの耐久性を考慮してのものか。
(↑最新のモダンシングルはスカート幅が非常に狭く短い。ピストン自重を軽く出来て抵抗も少ないが、空冷でピストンクリアランスを大きくせざるを得ないSRXでこういうモダンなピストンを採用すると首を振りやすくあえて採用されなかった由)


インプレッション

インプレッションのまえに私の単車の仕様を記しておかねばならない。
キャブレターはミクニTM-R34、カムはヨシムラSt-2、エキゾーストシステムはヨシムラサンパーである。
ミクニTM-Rキャブのインプレッションはこちら
カムシャフトはスポーツ走行向けのSt-2で、5000~7000rpm近辺がヤマといえる特性を持っている。
サンパーはSRX乗りなら言わずと知れたヨシムラの名品で、ポン付けするだけでパワーが数~10%以上向上する上ルックスもよく、音もリプレースマフラーとしては静かな部類なのでファンも多い。

 

608ccのノーマルエンジンはビッグシングルとしては扱いやすさに重きを置いており、YDISはスロットル開け始めではセカンダリキャブを閉じたままなので実質シングルキャブレターとなる特殊なもので、全開域のみツインキャブとなるノーマルキャブは急開時の息つきも殆どなく、大変優れた特性なのだが何せ非力。

峠では意外とキビキビ走れる・・・という評も「意外と」という枕詞が外せないのは悲しいところ。

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