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クランクケース内圧コントロールバルブ

クランクケース内圧コントロールバルブとは

クランクケース内圧コントロールバルブ(以下内圧コントローラーと略す)とは(株)NAG S.E.D.(ナグ エス・イー・ディ)が開発した「クランクケース内圧を下げる」ためのバルブである。


Fig.01 内圧コントローラー外観


構造は非常にシンプルで筒状のアルミボディの中に樹脂製のワンウェイバルブを設け、ブローバイガスを排出させるが外気を吸入しないようにクランクケースを密封することで結果的に内圧を下げている。
動力をなんら用いず、クランクケースに発生するブローバイガスの脈動のみを使ってバルブを作動させる点が画期的といえよう。
勿論僅かな脈動でバルブが作動するように摩擦係数は極小、その加工精度は非常に高い。
リードバルブなどを用いればコストの低減が図れるが、クランクケースで発生する僅かな脈動への追従性を極限まで追求した結果、スライドバルブが採用されたと聞く。
内圧コントローラーは一見高価だが、その恐ろしいほどの加工精度と素材の贅沢さ(バルブ本体に用いられる樹脂は摩擦係数が低く耐熱性に優れる物を厳選し、コスト度外視で採用されている)を鑑みればバーゲンプライスといっても過言ではない。



Fig.02 内圧コントローラー作動原理

 


ただし、 DUCATI用はクランクケースに取り付ける純正パーツと取替えとなるため、純正品同様オイルミストセパレーターとしての機能も有しておりFig.02と構造は異なり、その内容は複雑を極める。
分解等はお薦めできない由である。

何故クランクケースを減圧するのか

レシプロエンジンでは常にピストンが上下動を繰り返している。
ピストンをつなぎとめているコネクティングロッド(コンロッド)とクランクはクランクケースに収められている。


Fig.03 一般的に考えられるクランクケース内イメージ


単純に考えればピストンが下がればケース内が一時的に高圧になり、ピストンが上がれば低圧になるが、ブリーザーによってクランクケース内は一定の気圧に保たれる……はずなのだが、ピストンの上の燃焼室では絶えずガスが燃焼を繰り返してピストンを押し下げている。
その超高圧のガスがクランクケース内に流れ込まないようにピストンにはピストンリングがはめ込まれてはいるのだが、どうしても一部のガスがリングを通り抜けて(吹き抜けて)クランクケース内に入り込んでしまう。

Fig.04 ブローバイガス発生の仕組み


そうしてクランクケース内はどんどんガスによって圧力が高まってしまう。(原坊氏が実験結果をBlogに掲載されているのでここにリンクさせていただく)

圧力の高まったケース内にピストンが下がろうとすれば、当然強い力で反発を受けてしまう。これがいわゆる「ポンピング・ロス」と呼ばれる抵抗である。
市販エンジンにはこの溜まったガスを抜くためにクランクケースに穴が開けられており、通常高まった余剰圧力は排出される。(※)

 

クランクケースが高圧になってしまうと出力の損失を生じるため、減圧されていることが望ましいのだ。