Notebook

Parts Impression

クランクケース内圧コントロールバルブ

インプレッション

既に各方面でインプレッションが発表されているが、ここでは私個人の主観に基づき感じた点を述べようと思う。
感じ方と言うのは個人によって差があるものであり、また場所やシチュエーションといった外的要因にも左右されるのでこれが普遍的評価でないことを最初にお断りしておく。

テスト車両は私の所有する単気筒モデルYAMAHA SRX-6と2気筒のDUCATI MONSTER S2R1000。

YAMAHA SRX-6


Fig.06 SRXへの内圧コントローラーの取り付けイメージ


排気量を608ccから680ccまでボアアップしヨシムラSt-2カムへ変更、キャブレターをTMR-34に、排気系にサンパーをチョイスしている。
(開発の永冶氏によるとピストンのボア(面積)がポンピングロスには大きくかかわるため、ボアアップ車両には特に内圧コントローラーの効果が現れるとの事)

 

内圧コントローラーを取り付けてエンジンを掛けると、ポコポコというバルブの作動音が聞こえてくる。
エキゾーストノートにこだわる向きにはちょっと興を殺がれる音かもしれないが、回転を上げれば聞こえなくなるし特に問題視するほどのものではないだろう。
また、アイドリングを1200rpmに設定していたのだが、これが1700rpmまで跳ね上がった。

 

アイドリングを規定回転数にあわせて走り始める。
街中では「エンジンブレーキがちょっと甘いかな?」くらいの印象であったものが、峠に入るとエンジンの表情が一変する。
まずフケが圧倒的に軽いことに気づく。いつも走る峠でシフトポイントは大体決まっていたが、これがまったく変わってしまった。
勿論手前に寄ってくる。
3速までしか引っ張れなかったストレートが4速に入ってまだ余裕を見せるケースもあった。

 

急な下りの中速コーナーから逆カントのヘアピンにかけては3速から1速に一気にシフトダウンしてアプローチする必要があるのだが、それでもリアタイヤのグリップがまったく失われないことに目を瞠る。
今まで半クラを当てて強大なエンジンブレーキをごまかしながら進入していたのが実に扱いやすくなっているのだ。

 

開け始めもドンツキが抑えられる為スライドコントロールも非常にやりやすくなっており、ハイチューンシングルには非常に相性が良い。

 

内圧コントローラーの最大の効果は、エンジンの特性をマイルドにしてライディング(ドライヴィング)に安心感と余裕を与え、集中できるようになると言う面にある。
私のSRXは680ccの叩き出す暴力的な加速が何よりの美点ではあったが、あまりにも暴力的な加速ゆえラフなスロットル操作は厳禁。

峠では常に丁寧なアクセルワークが求められ、ロングツーリングなどで疲れている時にワインディングに出くわしたりすると一気にモチベーションが下がるのだが、内圧コントローラーによって非常に御しやすくなった所為か、ロングツーリング先でもワインディングで楽しむ気力……と言うか余裕が生まれるのは大きなアドバンテージであった。

 

 

最後に参考までに計測された燃費を記しておく。
内圧コントローラー取り付け前…平均22.42km/L
内圧コントローラー取り付け後…平均22.42km/L


DUCATI MONSTER S2R 1000


Fig.07 DUCATIへの内圧コントローラーの取り付けイメージ (シリンダー後方の穴の開いたパーツがそれ)


DUCATIエンジンには純正で内圧をコントロールしようと意図するパーツが取り付けられている。
ただ、コストの制限ゆえにその構造と効果は不十分なものと言わざるを得ない。

Fig.08 NAG S.E.D.製内圧コントローラーと純正品の違い(外観)

 


Fig.09 NAG S.E.D.製内圧コントローラーと純正品の違い(下面)

 

純正品では1/4円状のリードバルブでワンウェイバルブを形成しているが、オイルをクランクケースに戻すために中央に穴が開いており、ワンウェイバルブとしては不完全。
対して内圧コントローラーは6つの穴からブローバイガスを取り入れてバルブ手前でオイルとガスを分離し、オイルは中央の小さな穴からクランクケースへ戻してガスはバルブを通って排出される仕組みである。

 

さて、肝心のインプレッションだが、その効果は恐らくSRXに取り付けた汎用品の比ではない。
クランクケースの開口面積が大きくバルブにしっかりと脈動が伝わる所為か、SRXと違ってエンジンをかけてギアを入れ、クラッチを繋いだ瞬間にその恩恵を感じることとなる。

 

低速トルクが明らかに太くなるのだ。
DUCATIはリッタークラスのツインエンジンと言うイメージから想像もつかないほど低速トルクが細く、ローギアでさえ2,500rpm以下では派手にノッキングする。
通常走行では3,000rpmがほぼ常用下限といえるが、これが大いに改善される。

 

また、フケの軽さも体感できるほどに大きい。
タコメーターの上昇の早さが目に見えて早くなっているのだ。
峠を走れば更に印象は好転する。
粗雑な振動が綺麗になくなって実に軽やかに回るエンジンになる。
それまでのノーマルエンジンががさつに感じるほど上質なスロットルフィーリングである。シルキーなエンジンと言う形容が良く似合う。

 

それはまるで量産品のエンジンが一流メカニックによって手組みされたかのような変貌を遂げるのだ。
パワーの向上や燃費の向上もアナウンスされるパーツだが、100ps近いパワーを持つエンジンで体感できるほどのパワーアップを望むのは酷と言うものだし、燃費もアクセルの開け方が変わってしまうので劇的な向上を認められるかは微妙だろう。
(もちろん理論上ポンピングロスがトータルで減ずればパワーも上がるし、燃費も向上する)

しかし扱いやすさと快感性能とも言うべき能力は飛躍的にアップしている、と私は感じた。

 

なおこちらも参考までに燃費を記載する。
内圧コントローラー取り付け前…平均20.42km/L
内圧コントローラー取り付け後…平均21.19km/L

1km/lt近い向上が見られるが、ノッキングが抑えられるために一段高いギアが使えることから延びたものと考えられる。