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セッティングの実践

では実際にキャブレターをセッティングしてみましょう。
ここではピストンバルブ型キャブレターをとりあげますが、固定ベンチュリー型も負圧式キャブレターも要領は同じですので、それぞれ読みかえて解釈して下さい。


ところでキャブレターをセッティングするとき、どこを調整すれば良いのでしょう?
基本的には図の各部になります。

image_setting parts
image_needle image_jet
(左から)
ニードルジェット、
ジェットニードル(ケーヒン・ミクニ)
(左から)
メーンジェット(ケーヒン・ミクニ)、
パイロットジェット、パイロットスクリュー、エアスクリュー
 

これらのパーツを交換したり、ねじ込む回数を変えたりすることで調整します。
細かい部品が多いので取り外すときは気をつけてください。
また、キャブレターは精密器械です。
ジェット類は1/1000mm単位の精度で作られていますので、詰まらせてしまったり、あまりにも古くて腐蝕が出ているようなものは新調したほうが良いでしょう。


さて、図の示す通りキャブレターには沢山調整するところがあって、初めは何をどう触って良いのかよくわからないと思います。実際に調整する為にはエンジンのあらゆる回転域でガスが濃いか薄いかを判断しなくてはいけません。
濃いか? 薄いか?? この判断はベテランでも難しいので試行錯誤が不可欠です。とにかく初めは濃い目に振っていき、調子を落とし始めたら徐々に薄くしていく……というのが基本的な手順です。
では、具体的にどの様に判断すればよいのでしょうか?
一般的には別表のような症状が出ます。

濃すぎる症状
薄すぎる症状

●マフラーから黒煙を吹く
●点火プラグが黒く煤ける
●エンジン音が重々しく、スロットルに対する反応が鈍い
●加速中にボコつく
●吹け上がりが遅く、頭打ちが早い
●エンジンが暖気されると調子が悪くなり、スターターを引くとさらに悪化する
●エアクリーナーを外すと調子が好転する

●キャブレター内でバックファイヤーが起きる
●点火プラグが白く焼ける、オーバーヒートしやすい
●エンジンブレーキを掛けるとマフラーからアフターファイヤーが出る
●加速中にノッキングが起こる
●吹け上がりは早いがトルク感に乏しく、エンジンの振動が大きくなる
●エンジンが暖気されると調子が良くなり、スターターを引くとさらに好転する
●エアクリーナーを外すと調子が悪化する

これらの症状がアイドリングから全開まで出ないようになったらセッティングは完了しますが、実際には気温(これが高いと空気の密度が下がって濃い症状が出ます。気温が低いと反対に薄くなります)、湿度(同様に湿度が上がると濃くなります)、標高(標高が上がると気圧が下がって濃くなります)やエンジンの個体差によってセッティングは微妙に変わってきますので、セッティング道(笑)に終わりはありません。
「これでよい」と思えるまで根気よく取り組む必要があります。


キャブレターのセッティングは低回転域からスタートして高回転域へ向かって調整し、高回転域が決まったら再び低回転域へと微調整を進めます。
スローはすべての開度に影響を与えるのでおろそかにはできません。

また、前項で少し触れましたが、キャブレターのセッティングパーツはあくまでもアクセル開度に従い、エンジン回転数によりません。

 

例えば全開からスロットルを閉じてコーナーに入り、じわりとスロットルを開ける……という場合、いくらエンジン回転数が高くてもスロットル開度としては低開度になるのでセッティングパートとしてはスローになるのです。
スローが決まらなくては走ることすらおぼつかない所以です。

 


中低速が決まって普通に走れるようになったら、回転を上げて最終的にアクセル全開の状態での調整を行います。
でもアクセル全開は公道上ではとっても危険なので(免許証も危険です)、できればシャシーダイナモのあるお店に依頼するとか、サーキットで走るなど考えられる限り安全な方法を採りましょう。

 
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