キャブレターとは何か / キャブレターの種類と構造 / メンテナンスについて / セッティングとは / エンジンを掛ける前に / セッティングの実践 / 用語集

キャブレター用語解説

キャブレターのセッティングに際してよく使われる専門用語を集めてみました。
キャブレターセッティング特有の言葉や、キャブレターセッティング時以外で使うと意味が異なる言葉もありますのでお気をつけ下さい。

アイドリング

停車中などに走行に備えてエンジンを無負荷で運転させる事、またはその回転。

アイドルポート

アクセル全閉時にエンジンがストールしないように設けられた燃料噴射口の事。これを持たないキャブレターでは常にふかしつづけていないとエンジンが止まってしまう。初期のキャブレターや競技専用車のキャブレターにはアイドル系を備えないものも存在した。

アフターバーン

アフターファイヤーとも。マフラー側で不正燃焼が起こる現象で、やはり燃調が薄いとき、スロットルを閉じた状態で発生しやすい。

息付き

主にアクセル急開時に起こる加速不良の事。ベンチュリーは細くすればするほど流速が上がって流量は下がる特性を持っているが、負圧式以外のキャブレターでアクセル(スロットル)を急開すると、ガソリンを霧化する事ができないほどメーンボアの流速が落ちてしまう事がある(ベンチュリーが広がるのと同じ事になり、メーンボア内の流速が落ちて圧力が上がってしまう為)。結果空気だけがエンジンに送られてしまい、エンジンはブスブスと失火してしまう。この状態を「息付き」と呼ぶ。

エアスクリュー

パイロットジェットに混入させるエアの量を計量する。ねじ込む回数によって空気の流量を調節できる。

エアファンネル

単にファンネルとも。キャブレターのメーンボアにつながる空気取り入れ口に取り付ける。ファンネル[Funnel……煙突、漏斗などの意]というのはその漏斗状の形から。ファンネルには空気を集め、流速を高める効果があるので最近の車輛では、エアクリーナーと併用して取り付けられる事が多い。基本的にただの漏斗状の筒なので、剥き出しのファンネルだと異物の混入の可能性は否定できないが、そのパワーやダイレクトなスロットルフィーリングに魅せられる者は少なくない。

エアベンド

フロートチャンバー内を大気圧と同じに保つ為の空気抜きの事。

A/F

「エーバイエフ」と読む。Air By Fuelの事で、空燃比の事。

A/F計

空燃比を数値化する装置。

エンリッチナー

バイスターターのひとつ。アイドル、スロー、メーン、加速のほかに設けられた別系統の燃料路で、冷間時に濃い状態を作り出す為の装置。本来のチョークと違ってメーンボアにはバルブなどを設けない為高出力化に有効である。

エアロック

キャブレターのフロートチャンバーへつながる燃料チューブがキャブレター本体よりも下に垂れ下がってしまうと起きやすい。キャブレターを取り外したときなどに、ホース内に空気が入ってガソリンがキャブレターに届かなくなる現象の事。


また、フルカウルなどで周りが囲まれている場合に、エンジン放射熱によって燃料パイプが暖められ発生した気泡がパイプ内を塞ぐことがある。その手の機種の燃料ホースが太いのは、この対策のためである。燃料ホースを社外品に交換される場合は熱にも気を配られたし。

オーバーフロー

フロートレベルが規定値を超えてガソリンがキャブレターからあふれ出る事。多くはニードルバルブの段つき磨耗などで起こるが、ティクラーなどが装備されている場合、引っかかってオーバーフローする事もある。

 

加速ポンプ

キャブレターの息付きを補う為に設けられたメーン系とは別の燃料系の事。多くはアクセル急開時にガソリンをダイヤフラムやプランジャーなどで直接吸気ポートに噴射する。

乾式エアクリーナー

エレメントが乾いている状態で使用するエアクリーナーの事。多くは不織布などを折りたたんで作られており、日常のメンテナンスとしてはエレメントに傷や孔などがない事を確かめ、本体を軽く叩いてほこりを落とす程度でよい。ただし洗浄できないので、真っ黒に汚れてしまったエレメントは交換するしかない。

キャブレター

エンジンの吸入負圧(空気を吸い込もうとする力)を利用してガソリンと空気を混ぜ合わせ、火の付きやすいガス状(混合気)にするとともに、エンジンの運転状態を調節する器械。

強制開閉式キャブレター

スロットルの開け側と戻し側の2本のワイヤーを備えたキャブレターの事。仮にリターンスプリングが破断しても安全に停止する事ができる。

空燃比

空気とガソリンの交じり合う比率の事。ガソリンはその分子構造からガソリン1に対して空気約14.7で完全に分解して水と二酸化炭素になる。これを理論空燃比と呼ぶが、実際の運転では多少異なり、1:14前後の経済空燃比(最も燃費がよいとされる空燃比)、1:12程度の出力空燃比(最も高い出力が得られるとされる)などが知られている。一般的には濃くなれば濃くなるほどトルク感は増し、回転は重く上が回らなくなる。薄くなるほどにトルク感は薄くなって、軽く気持ちよく伸びるようになるが、エンジンブローなどを起こしやすくなる。

混合気

空気とガソリンの交じり合ったガスの事。通常空気とガソリンの比率(空燃比)は1:13前後とされる。

 

サージング

一定走行時に起こるギクシャクした回り方をここではサージングと呼ぶ。燃調が薄い時に、微振動を伴って発生する事が多い。

サイドドラフト

ホリゾンタルキャブレターの事。

湿式エアクリーナー 

エレメントにオイルなどを含ませて使用するエアクリーナーの事。多くはスポンジでできており、汚れたときには洗浄油で洗って防塵オイルを塗布すれば長期間の使用に耐える。

ジェッティング

もともとはジェット交換の作業の事をジェッティングと呼んだが、それより転じてキャブレターのセッティング(セッティング状態や、セッティングする行為そのもの)を表す言葉ともなっている。

ジェット

キャブレターのセッティングパーツのひとつ。空気の量やガソリンの量を規制する穴のあいたネジ。穴の大きさで流量を制限している。その加工精度は1/1000mm単位で、詰まりや腐蝕が生じた場合、正確にもとの性能に復帰させる事は困難。

ジェットニードル

メーンノズルに突き刺さる様に配置され、中速域のガソリンの流量を計量する針状のパーツ。

スライドバルブ

ピストンバルブ型キャブレターのスロットルバルブの事。

スロットルストップスクリュー

アイドルスクリューとも呼称される。アイドリング回転数を決定する為に設けられたネジの事。

スロットルバルブ

キャブレター、ひいてはエンジンをコントロールする為につけられた弁の総称。アクセルとも呼ばれる。スロットル[throttle……締める・減速するの意]という言葉からも判るようにスロットルは全開からエンジンの回転数を落として、必要な時に必要な出力だけを取り出す為に設けられている。アクセル[accelerate……加速する・促進するの意]という言葉は、結果的に車体が加速する為につけられた呼び名であり、構造的にはスロットルと呼ぶほうが正しいだろう。

 

ダウンドラフトキャブレター

前転した状態で(メーンボアが直立した状態で)使えるようにしたキャブレターの事。これに対して便宜上、水平の状態で使うものは「ホリゾンタルキャブレター」と呼ぶ。

段数

おもにジェットニードル上部に設けられた溝の事をいう。任意の位置の溝にEリングなどのクリップを差し込んでジェットニードルの高さを調整する。

チョーク 

スターターのひとつ。メーンボアのエアクリーナー側にバタフライバルブなど設けたもの。始動時にこれでメーンボアを絞って空気量を減らし、相対的に燃調を濃くするものだが、エンリッチナーなども「チョーク」と表記される事が多い。

ツインチョーク

双胴型キャブレターの事。ひとつのミキシングボディーに二つのメーンボアが設けられている。

ツインバレル

ツインチョークに同じ。

ティクラー

スターターのひとつ。フロートを押し下げるスイッチの事である。フロートを押し下げる事でフロートチャンバー内にガソリンを流入させ、意図的にフロートレベルを上げる事で一時的に濃い混合気を作る事ができる。フロートレベルが元に戻ると混合気も元に戻るので、本格的な冷間時には不向き。あくまで再始動用と割り切った方がよさそう。

デトネーション

エンジンの異常燃焼のひとつ。点火後の燃焼過程で、燃焼室の混合気が自然発火し、異常かつ急速な燃焼が起こる事。通常、燃焼室内の火炎伝播速度は毎秒数十mとされるのに対して、デトネーションでは毎秒数百mにも及ぶ。火炎伝播速度が音速を超えると科学的に「爆発」とされ、衝撃波が発生してシリンダーやピストントップに激突し、打音が発生する。この衝撃波が強くなると、エンジン内部にクラック(ひび)を入れたり、場合によっては破壊する事もある。


更に、衝撃波はピストンやヘッドの保護膜(熱境界)を突き破り、アルミ地が直接燃焼熱に晒されることによってピストン表面を溶かすことが有る。2サイクルエンジンのデトネーションと呼ばれる状態がこれである。

同調

多気筒エンジンでキャブレターが複数ある場合、スロットルバルブは同じタイミングで、同じだけ動く必要がある。これが狂うと気筒ごとに燃調が違って回転にバラつきが出る。調整する為にはバキュームゲージ(負圧計)と呼ばれる工具と作業者の熟練が必要。

ドレンプラグ

キャブレターにおいてはフロートチャンバー内のガソリンを抜くために設けられた栓の事。

 

中子構造

可変ベンチュリー型キャブレターではメーンボアとスライドバルブが交わる様に配置されている。そのため、スロットル全閉時にメーンボアを封止するためには、メーンボアにスライドバルブが収まる切り欠きを設けなければならない。これではメーンボア形状がガタガタになって流速が落ちてしまう。

 

バルブが全開になる前の状態では、完全ではないにしろバルブが通路に邪魔をすることでベンチュリー効果をもたらすが、全開時は一番面積の広い部分になる。これを通常「デットスペース」と称していた。

これを回避する為に考案されたものがスライドバルブの中子化である。スライドバルブを円柱ではなく円筒とした事が特徴で、キャブレターボディーには筒状のスライドバルブが上下する為の溝があるだけである。こうする事でスムーズなメーンボアと速い流速を手に入れる事ができたのである。

ニードル

ジェットニードルの事

ニードルジェット

メーンノズルとも呼称される。ジェットニードルのストレート径と同じ働きをし、中間域の燃料を計量する。四輪車のキャブレターでは「エマルションチューブ」に相当する。

ニードルバルブ

フロートに取り付けられたバルブの事。小さな鉛筆のような形状をしており、フロートが下がるとニードルバルブとバルブシートとの間に隙間ができて、ガソリンがフロートチャンバーに流入する。

熱境界

熱は空気や水を伝播する事によって伝導拡散するが、高温部分と低温部分の境界に空気や水の薄い膜ができて熱の伝播を阻害する事がある。
これを熱境界という。
熱境界は物理的な力を加える事で破壊される特性を持つ。
例を挙げるなら 熱い風呂を想像されるとよいだろう。熱い湯船に浸かってじっとしているとそのうち熱さを感じなくなる(熱境界ができる)が、動くとまた熱さを感じる(熱境界が破壊される)のはこのためである。

熱境界はエンジンの冷却性能を落とす要因であるが、逆にピストンや燃焼室を燃焼熱から保護する役割も持つ。
デトネーションが起こるとこの熱境界が衝撃波によって吹き飛ばされ、素材が高熱に直にさらされて溶けることがある。

燃調

空燃比に同じ。

ノッキング

エンジンの燃焼状態が適切でない為にヘッド周りから「カリカリ」「コンコン」といった異音を発する事。原因には「デトネーション(異常燃焼)」と「プレイグニッション(過早点火)」の二つが考えられる。デトネーションやプレイグニッションは

1. 点火時期が進みすぎている場合
2. エンジンの負荷過大
3. 圧縮比に対してガソリンのオクタン価が低すぎる場合
4. オーバーヒートしている場合
5. 進角異常

などの時に発生しやすいとされるが、燃調が薄くてもオーバーヒートしてノッキングが起こりうる。

 
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